2014/11/28

真昼の肝試し

 

 



久しぶりに戻ってきた郷里は
なかば廃村となっていた。

秋の陽気に誘われるまま歩を進め
廃校の門をまたいだ。

建替えられた校舎は馴染みなく
ほどなく廊下に迷った。

誰もいないはずの教室は
無音の気配に満ちていた。

じっと見詰め返してくる
写真の中の歴代校長たち

冷めた眼で見詰め返してくる
卒業制作の石像たち

それぞれがあらぬ方向を見やっている
真黒にすすけたトーテムポールたち

風雨にさらされ力つき
今にも膝折りそうな朽ちた遊具たち

校庭の、かつて希望に満ちて
飛び立つ風を待っていた綿毛たちは
その機会をのがし
とうの昔に干涸びていた。

そうだ風を起してやろう。
今度こそ飛び立てるだろう。


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。